リニア中央新幹線の名古屋~新大阪間には途中2つの駅が設置されますが、その位置が決まる瞬間が近づいています。

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はじめに

開業目標

JR東海によるリニア中央新幹線の当初計画は、東京~名古屋間は2027年開業、その先は一度債務を減らして経営体力を回復してから工事に着手し、名古屋~新大阪間は2045年開業というものでした。
しかしこれでは遅い、前倒しが必要だということで、2016年に当時の安倍首相の主導で財政投融資が実施されました。翌2017年までにJR東海が3兆円規模の資金を借り入れたことにより、現在は名古屋~新大阪間は最速で2037年開業ということになっています。

アセスメント着手へ

その後、最近の経過はどうなっているかというと、大井川の水資源問題で静岡県内の着工が遅れているなど東京~名古屋間は予定通りの2027年開業が既に絶望的な状況となっています。
一方で名古屋~新大阪間については予定通りの開業に向けて、2022年5月に岸田首相が2023年中の環境アセスメント着手を表明し、それを盛り込んだ「骨太の方針」が6月に閣議決定されました。

外部リンク

経済財政運営と改革の基本方針2022 – 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html

これが何を意味するかというと、アセスメントの前提となる名古屋~新大阪間のルートが近いうちに決まるということです。参考として、東京~名古屋間の中間駅の位置は2011年に「計画段階環境配慮書」によって直径5キロほどの円で、その後2013年に「環境影響評価準備書」によって詳細に示される、という流れでした。これと同じスケジュール感であれば、名古屋~新大阪間の中間駅も2023年に直径5キロほどの円が、2025年に詳細な位置が示されることになります。

外部リンク

環境影響評価法の手続き|JR東海
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/

管理人

民間事業だという体裁を崩していない以上、あくまで最終決定権を持つのはJR東海であることに注意する必要があります。

リニア三重県駅

三重県は2022年11月、中間駅の位置として亀山市をJR東海に打診しました。具体的にはもともと亀山市が提案していたエリアのうち、実現可能性などから亀山駅そのものは除外し、それを取り囲む井田川駅亀山インターチェンジ下庄駅の3か所周辺を候補としました。

外部リンク

三重県|空港・海上交通・リニア:三重県リニア推進本部
https://www.pref.mie.lg.jp/common/06/ci600015564.htm
三重県、亀山市のリニア駅候補地絞らず「3案大差ない」 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD292NM0Z21C22A0000000/

三重県駅
出典:三重県ウェブサイト

四日市・鈴鹿の中心部からは井田川駅がアクセスしやすく、逆に津の中心部からは下庄駅が最短距離となります。これら2駅は鈴鹿サーキットにも近いという観光面でのメリットもあります。
加えて、鈴鹿市は「難しいとは思う」とした上でリニア駅への近鉄鈴鹿線の延伸を求めています。リニア駅が井田川となった場合、距離が短い上に途中にイオンモール鈴鹿という集客施設もあるため、もしかしたら一定の採算性が認められるかもしれません。

一方、当然ですが高速道路からのアクセスは亀山インター付近が便利です。周辺にシャープ亀山工場などが既に立地しているのも関係者にとってはプラスでしょう。ただし、在来線との乗り換えを確保するには新駅を別途設置することになります。

(2023年3月10日追記)
鈴鹿市の末松市長は2023年3月9日、近鉄鈴鹿線の延伸を要請する方針を正式に表明しました。

外部リンク

三重・鈴鹿市長、リニア駅まで近鉄鈴鹿線の延伸要請へ – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD099XB0Z00C23A3000000/

リニア奈良県駅

奈良県では荒井知事が2022年8月から9月にかけ、中間駅の位置として平城山駅八条新駅(仮称)、大和郡山市の3か所周辺を有力としてJR東海に打診していることを明らかにしています。

外部リンク

令和4年9月7日(水曜日)知事定例記者会見/奈良県公式ホームページ
https://www.pref.nara.jp/61587.htm

なお繰り返しになりますが、あくまで実際に最終決定権を持つのはJR東海です。単純に建設距離を短くしたいのであれば、もっと北の祝園駅(京都府精華町)あたりを通るのが最短となるはずです。

管理人

とはいえ、静岡県と揉めている教訓からJR東海はおそらく関係自治体をなるべく減らしたいでしょうし、奈良県の提言を無碍にするのは可能性としては低いかもしれません。

JR大和路線の平城山駅周辺は新興住宅地です。建設距離は短くなりますし、少し西側の近鉄沿線に比べて開発が進んでいないため工事はしやすいと言えます。

八条新駅とは同じJR大和路線の奈良~郡山間に設置予定の新駅のことで、すぐそばにできる大和北道路(京奈和道)の奈良インターチェンジと合わせてまちづくり計画が進んでいます。ここにリニアまで加われば今後大発展のポテンシャルがありますが、奈良市街地を横切る以上は建設費高騰のリスクは切り離せません。

大和郡山市の候補は、現在は駅がないJR大和路線と近鉄橿原線の交差部に両線の新駅とリニアの中間駅を一体的に設置するというものです。近鉄電車がアクセスに使えるというのは奈良県民にとっては非常に利便性が高まるのですが、最初の地図の通り名古屋~新大阪間を結ぶ上では遠回りなのが否めないのがネックです。

管理人

そもそも、この交差部の新駅はリニアに関係なく作るべきようにも思われます。しかし先述の荒井知事の会見によると、既存の近鉄郡山駅と距離が近いということを理由に挙げ、リニア無しでは近鉄側が乗り気ではないようです。