神戸市東部の東灘区に位置する六甲アイランドの、さらに沖合に新たな人工島を造成する計画です。

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概要と大阪湾フェニックス計画

六甲アイランド南の予定地のうち、南東側の88ヘクタールは既に大阪湾フェニックス計画によって神戸沖埋立処分場として埋立が進んでいます。大阪湾フェニックス計画とは、関西圏から発生した廃棄物を大阪湾で埋立処分して生まれた土地を有効活用することを指し、現在は1期・2期の計4か所で処分場が稼働しています。

1期…尼崎沖埋立処分場・泉大津沖埋立処分場
2期…神戸沖埋立処分場・大阪沖埋立処分場
3期…神戸沖埋立処分場・大阪沖埋立処分場

外部リンク

Home – 大阪湾広域臨海環境整備センター(フェニックスセンター)
https://www.osakawan-center.or.jp/

また、神戸沖と大阪沖は既に受け入れの限界が近いことから3期も作ること、そのうち神戸沖は2期の西に隣接して70ヘクタールほどの面積にすることが決まっています。

この神戸沖埋立処分場2期・3期から北に広げる形で、最終的に333ヘクタールの人工島を完成させる計画が六甲アイランド南です。最近話題になることが多い大阪市の夢洲が390ヘクタールであり、それに近い数字です。

管理人

ところで地図を改めて見ると、六甲アイランド南の次の人工島を神戸沖に作れるスペースが少ないことがわかります。船だけでなく、国際化が決まっている神戸空港を使う航空機の航路も確保しなければなりません。

都市が存在する以上は、廃棄物や浚渫(しゅんせつ=川が海底まで運んできた土砂を船が通れるように取り除くこと)による土砂は発生し続けます。画期的な解決策は将来生まれるのでしょうか。

計画の経過

震災の直撃

1995年の阪神・淡路大震災で、神戸の街は想像を絶するほどの大打撃を受けます。六甲アイランド南を貨物の拠点にする構想は古くからありましたが、復興を優先するため2001年をもって一度凍結されることとなってしまいました。

神戸港将来構想

2017年5月に開催された神戸港150周年記念式典の場において、神戸市は神戸港将来構想を発表しました。約30年後の2050年までを見据えて、神戸港の国際競争力を取り戻していくための長期的戦略です。

約70ページに及ぶ神戸港将来構想ですが、その中心となるスローガンを抜き出すと次の通りです。「新たな価値」というフレーズに重きを置いていることがわかります。

  • 神⼾港が⽬指すべき将来像
    挑戦・進化を続けるみなと神⼾
    ~新たな価値創造を⽬指して~
  • 「港湾・産業」の⽬標
    グローバルなサプライチェーンの中で、新たな価値を生み出す港
    ~神戸国際ロジスティクスパーク構想~
  • 「にぎわい・都市」の⽬標
    ラグジュアリーな時・場・出会いで、新たな価値を生み出すみなと
    ~世界を魅了するウォーターフロント構想~
出典:神戸市ウェブサイト

そのうち、港湾・産業分野を象徴するコアプロジェクトの1つとして挙げられたのが、六甲アイランド南における神戸港ロジスティクスターミナルの整備です。構想内には六甲アイランド南の完成イメージが描かれています。既存の六甲アイランドと橋で繋がること、また島内に住居等の機能はなく、島全体が物流拠点に特化することが想定されています。

神戸港ロジスティクスターミナル
出典:神戸市ウェブサイト

神戸港ロジスティクスターミナルの整備により、「⾼付加価値化機能を備えた再輸出型トランシップ拠点」を形成することで新たな価値を生み出すとしています。

管理人

何やら言葉が難しいですが、この六甲アイランド南はただコンテナを積み替える場所ではありません、原材料を輸入→工場で製品に加工→完成製品を輸出、までこの六甲アイランド南を出ずに完結できますよ、とアピールしています。

とりわけライバル視しているのは台湾の高雄港です。日本と台湾はASEAN諸国とアメリカの中継拠点として大差ないので神戸にも勝機があることが力説されています。

高雄
出典:神戸市ウェブサイト

整備再開へ

ちょうど震災から25年を迎えた2020年1月、ついに六甲アイランド南を整備する計画の凍結解除が検討されていることが報道されました。神戸港はようやく震災復興から次のステップに踏み出します。

外部リンク

ひょうご経済+|経済|「六甲アイランド南」港湾整備再開へ 震災で計画凍結、貨物量回復で機能強化
https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/202001/0013035109.shtml

神戸港中期計画

その後、2022年12月には神戸港中期計画が策定されました。コロナ禍による社会情勢の変化なども踏まえつつ、神戸港将来構想を推進していくためのより短いスパンでの計画となっており、2030年代前半までの概ね10年間を対象としています。

外部リンク

六甲アイランド南については、埋立を加速したい、六甲アイランドに近い北側から土地を順次使っていきたい旨が記述されています。それを実現するには六甲アイランドとの間に橋を架けなければならず、急ピッチで事業を進める必要があります。

六甲アイランド南は、港内の浚渫土砂の受入や広域廃棄物処分場としての役割の継続と共に、積極的な建設残土の受入による早期陸域化の検討。
埋立の進捗状況や社会経済情勢等を踏まえ、高付加価値化機能を備えた世界基準の新たなロジスティクスターミナルの形成等の土地利用検討。

出典:神戸市ウェブサイト
神戸港中期計画
出典:神戸市ウェブサイト

余談 ~六甲ライナーは延伸されるか?~

非常に古い話になりますが、1989年にまとめられた「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」(通称:答申第10号)という文書があります。その後2004年には「近畿圏における望ましい交通のあり方について」(通称:答申第8号)という新たな文書が出され、この2つの文書をベースに関西の鉄道新線は計画されてきました。

外部リンク

鉄道:運輸政策審議会 答申図(三大都市圏) – 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk4_000009.html
近畿地方交通審議会 – 近畿運輸局
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/shingi/

さて、答申第10号を見ると、六甲アイランド南の造成が完成した暁には六甲ライナーを延伸すべきとされていることがわかります。一方で、答申第8号が出された時期には造成そのものが凍結されていたため記述はありません。

答申第10号
出典:国土交通省ウェブサイト

六甲アイランド南のプロジェクトが再び動き出した今、六甲ライナーの延伸は実現するのでしょうか。管理人個人の見解になりますが、残念ながら現時点では可能性はそこまで高くないと思います。というのは、島内に居住機能がないということは通勤定期客だけの片道輸送になってしまい、鉄道としてのコストパフォーマンスが良くないからです。

管理人

似た事例として近年、大阪モノレール彩都線の彩都西~東センター間の延伸が断念されています。

とはいえもちろん、将来的にバスで捌ききれないほどの従業者が島内で働く可能性を否定するものではありません。